東京科学大学 総合研究院
全固体電池研究センター

研究設備

全固体電池研究センターの主な装置を紹介します。必要に応じて中性子施設、放射光施設などを利用させて頂いています。

物質合成装置

電気炉

無機材料合成に利用する管状炉、マッフル炉などの電気炉を各種揃えています。100˚Cから1750˚Cまでの反応温度で合成させています。合成雰囲気を制御するフランジも全ての管状炉で使用できるようになっています。

高エネルギーボールミル装置

固相法で材料を合成するには、試薬を粉砕、混合する必要があります。特に一部の材料は、機械混合による非晶質化やメカノケミカル反応を経ないと合成ができないこともあります。そのため、複数のボールミル装置を導入し、円滑に実験が進められるようにしています。

高品質薄膜合成装置

レーザーアブレーション装置(レーザー発振源2台,製膜チャンバー3台)は、エピタキシャル薄膜を作るための合成装置として利用しています。リチウム電池や燃料電池の材料を作るために、大活躍しています。チャンバー内には反射高速電子回折(RHEED)も設置され,薄膜が1層ずつ成長していく様子を確認しながら合成することが可能です。製膜チャンバーのうち2台はグローブボックスに直接連結されていて、電池材料の大敵である大気に曝さずに電池を作ることができます。

スパッタリング装置

マグネトロンスパッタリング装置(3台)は薄膜電池の電極や固体電解質膜の合成に利用しています。グローブボックスと連結した装置(2台)とロードロックチャンバーを介してレーザーアブレーション装置と連結した装置(1台)が導入されています。大気非暴露かつ、連続製膜が可能な仕様です。様々な薄膜合成に利用出来るため、フル稼働で動いています。

高圧合成装置

キュービックアンビル型高圧装置は、3万から7万気圧の高圧下で物質を合成するためのものです。180, 250, 400トンの三台が稼働しています。常圧合成では得られない新材料が合成出来ることや、短時間で合成が終了することなど、メリットがたくさんあります。

 

グローブボックス

グローブボックスはアルゴン雰囲気で物質を取り扱うためのもので、固体電池材料の研究にはなくてはならない装置です。扱う物質によって、いろいろ取りそろえています。

 

構造解析装置

X線回折

X線回折装置として、各種粉末X線回折装置と薄膜X線回折装置があります。無機物質の合成が主な研究テーマですから、合成した後はX線で同定する、がルーチンの作業となっています。装置はフル稼働で、故障すると研究室のすべての動きが止まってしまいます。粉末X線回折装置は4台設置され、うち2台は温度や雰囲気を制御しながら測定が可能です。薄膜X線回折装置は2台あり、Cu線源とMo線源を用いて、測定の目的によって使い分けています。

電子顕微鏡

走査型電子顕微鏡(2台)では、試料形態や混合状態を調べます。試料を保管しているグローブボックスから大気非暴露で搬送することができます。EDXも備えており、組成分布も調べることができます。全固体電池には電極活物質と固体電解質からなる電極複合体を用いるため、十分な反応面積を確保できているかなどを調べるために欠かせない存在になってきました。分解能の異なる装置を導入し、観察する試料に合わせて併用しています。電池をそのまま真空室に導入して、充放電中の観察も可能です。

プローブ顕微鏡

走査型プローブ顕微鏡(2台)は、作製したエピタキシャル薄膜の表面状態を調べるために導入しました。表面反応解析に必要とされるÅオーダーで平滑・均一な薄膜であるかを評価しています。最近では、断面試料作製装置(クロスセクションポリッシャ)を導入し、ペレット材料についても,形態と物性の評価ができるようになっています。

Raman分光

Raman分光装置は材料の局所構造を調べるために導入しました。X線回折測定と併用して行うことで、材料の平均構造と局所構造それぞれを理解することができます。

粒度分布形

各種材料の粒子サイズを調べるために導入しました。粒子サイズやその分布によって電池性能は驚くほど変化するので、粒度分布を理解することはとても重要です。

物性評価装置

電気化学

電池充放電装置、電気化学測定装置などは、電気化学の研究室には珍しくない、一般的な装置です。多くのチャンネルを揃え、温度、雰囲気、圧力など様々なパラメータを制御しながら材料やデバイスの性能を評価しています。

低温インピーダンス測定装置

硫化物系の固体電解質は粒界抵抗が小さいため、バルク成分と粒界成分の分離が困難です。そこで100 MHzの高周波数から測定できるインピーダンスアナライザとクライオスタットを組み合わせ、低温領域で精密な測定を行い、抵抗成分の分離を行っています。

SQUID

SQUID装置は、物質の磁性を調べる装置です。ただ、液体ヘリウムが少し(ずいぶん?)高いのでフル稼働というわけには行かないのがつらいですね。

TG-DTA

示差熱天秤(TG-DTA)では,昇温・降温時における材料への熱の出入りや重量変化から、材料合成の基礎情報である相転移挙動を調べるのに大活躍しています。高温X線回折測定データと組み合わせて眺めることで、材料への理解を深めていきます。

共同利用の実験施設

SPring8

・大型放射光施設SPring-8 BL14B1, BL22XU カッパ型多軸回折計
・界面組織の直接観察は、電池の電気化学反応の解明に極めて重要です。表面回折,反射率測定により、結晶構造および形態の変化を調べています。

・大型放射光施設SPring-8 BL02B2, BL19B2 粉末X線回折装置
・結晶構造の理解は材料開発に欠かせません。単色化された高強度のX線回折データを取得し、その平均構造を解き明かすことで次なる材料設計の指針が得られます。

・大型放射光施設SPring-8 BL28XU 硬X線光電子分光装置
・材料や界面の電子構造を理解することで、反応機構の解明や高性能化への指針を得ることができます。硬X線を用いることで、埋もれた界面の情報を得ることができるため、充放電中の反応界面における電子構造変化を直接間接する実験を行っています。

J-PARC

・中性子施設J-Parc TOF型粉末中性子回折装置SuperHRPD(BL08)、iMateria (BL20)、SPICA(BL09)およびソフト界面解析装置 (BL16 SOFIA)
中性子回折によりX線では見にくいLiやHの結晶中における位置や量などを調べています。

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